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山口達也の復帰を許してはいけない

9/29放送の鉄腕DASH山口達也が映り、山口達也は今もTOKIOのメンバーだと示唆された。それを見たTOKIO鉄腕DASHのファンによる喜びのツイートがツイッターに溢れていた——「山口くんには帰る場所がある」「もう復帰してもいいんじゃないかな」これらのツイートを見て、私は死にたくなった。あり得ない。ここでは性被害者の目線から、なぜ彼の復帰を許すべきでないか、及びセカンドレイプについてお話しする。感情論ではない、筋の通った話にするよう心がけたので、画面の向こうのあなたが復帰賛成派でもどうか最後まで読んでほしい。

1.事件の流れ

まずは山口達也の起こした事件を振り返る。20時ごろ、自宅で酒に酔った山口が、自身が司会を務める番組の出演者である女子高生を自宅に来るよう誘う。女子高生は友人を連れて山口の自宅を訪れる。そこで女子高生は山口達也にキスをされ、顔を舐めまわされ、体を触られる。危険を覚えた女子高生はトイレに逃げ込んで母親に電話をし、被害届を出すに至った。

 

2.事件後のセカンドレイプ

この事件に対し、世間では
①女子高生が示談金等を目的に山口達也をハメたのではないか
②夜に男の家に行った女子高生に非がある
③キス程度で騒ぎすぎ
という、大まかに分けて3種類のセカンドレイプが横行した。
①女子高生は示談金の受け取りを拒否したので何の得もしていない
山口達也を信頼していて危険があるとは思わなかったかもしれない。危険を感じたとしても、自分より立場が上の者に逆らうことは難しい。そもそも男の家に行く=セックスの同意ではない
③例えキスだけでも大いに問題だし、今回はそれ以上のことをしている。女子高生がトイレに逃げ込まなければレイプに発展した可能性が大いにある
と、いずれも簡単に否定できる馬鹿げた話だ。にも関わらず女子高生は非難され、特定され、晒し上げられた。保護するべき子供を、大人が更に傷つけたのだ。性被害者が、その後のセカンドレイプを恐れて泣き寝入りしてしまうことは往々にしてある。セカンドレイプは性加害を助長する唾棄すべき行為だ。山口復帰説が浮上すると共に「夜に家行ったんだから女子高生も悪い」などの意見が再び散見されるようになったが、もしこれを読んでいる方がそんな風に思っているなら、今すぐ考えを改めるべきだ。

 

3.性暴力を軽んじてはならない理由-私の受けた被害とその後-

まずは、これを読んでいる人に「性暴力は魂の殺人」と言われるほど重大なことだと納得してもらわなければならない。そのために、私が12歳の時に性被害に遭ってから、20歳の今までどう生きてきたかを話す。
私が初めて被害に遭ったのは小学6年生の時だった。男(以下、Sとする)と私が2人で男子トイレの掃除をしていた時、Sが私を床に押し倒した。私はSを振りほどこうと抵抗したが、Sの力は強く微動だにしない。そのままSは私にキスをした。舌を入れようとしてくるのが気持ち悪くて必死に歯を食いしばる。歯と歯茎を舐めまわされて、そこでようやく逃げ出すことができて、廊下の水道でいつまでもいつまでも口をすすいだ。恥ずかしくて親には言えず、そのまま卒業した。
中高は女子校だったが、電車で週に3、4回のペースで痴漢に遭っていた。無事逮捕に至ったことは1度だけで、ほとんどは抵抗できないまま、もしくは抵抗しても逃げられて終わった。次第に電車に乗るのが怖くなった。男の人の体温が怖かった。背の低い私のうなじに、スマホをいじる男性の手が触れる。じわじわと伝わる熱にパニックになり、泣いてしまうこともあった。その男性は痴漢でも何でもないと頭では分かっているのに制御できない自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
大学は共学に進学した。地味な制服を着なくなり、化粧をするようになったことで痴漢に遭う頻度は格段に落ちた。が、共学に来て初めて、私は自分がとんでもない男嫌いになってしまったことに気付いた。怖いのだ。自分より大きな体が怖い。筋肉のついた腕が怖い。低く、大きな笑い声が怖い。男の人と会話をするのが苦痛でサークルはすぐにやめてしまい、所属を失った私はほとんど友達を作ることができなかった。恐怖に脂汗を流しながら電車に乗って、授業を受けて、一人で弁当を食べて、授業を受けて帰る。これが今の私の日常だ。
長い話になってしまって申し訳ないが、「たかがキス」に始まり、たくさんの痴漢被害を経て、8年経っても私は人並みの生活ができずにいる。致命的に壊れている。「たかがキス」「ちょっとお尻を触られたくらいで」と性暴力を軽んじている人に、その認識を正してもらえればと思う。

 

4.性被害者とフラッシュバック

話は変わるが、男子トイレキス野郎ことSはちょっとした有名人だ。サッカーの試合で活躍して新聞に載ったこともあるし、今では児童チームの指導者になって爽やかな顔写真が公式サイトに載っている。それをあらSくんよ懐かしいわねえ、と母に見せられるたび、私は固まってしまう。押し倒された床の硬い感触が押さえつけられた腕の痛みが触れた唇のかさついた質感が歯を舐めまわされるゾワゾワとした感覚が口を濯いだ水道水のカルキの匂いが、Sの顔を見て瞬時に蘇る。性被害者によくあるフラッシュバックというものだ。フラッシュバックを起こした日はもうダメだ。頭の中がグチャグチャで、早く死にたいとしか考えられず、薬を飲んで眠りに落ちるまで布団の中で震えるしかない。

 

5.山口達也の復帰を応援するべきでない理由

さて、山口達也が芸能界に復帰し、件の女子高生がそれを見てしまったら、私と同じようにフラッシュバックに苦しまないと、言い切ることができるだろうか。できるはずがないのだ。彼女が非常に強靭な精神の持ち主で、山口さん元気そうでよかった〜と流せるかもしれないし、私以上に脆く、薬を大量に飲むなり手首を切るなりしてしまうかもしれない。彼女が今どんな状態であるか、無関係な我々には分からないからこそ、被害を大きく見積もっておくべきなのだ。被害者が立ち直れていないのに「山口くんはもう十分反省してる!早く復帰してほしい!」などと言われたら、どうなってしまうのか。あなたも彼女を傷つけている可能性があることを自覚してほしい。
セカンドレイプにせよ、復帰の応援にせよ、とにかくこの国は性犯罪に甘すぎるのだ。山口達也が立場を利用して未成年に暴行を働いた」という事実を重く受け止めて、被害を受けた子供を守る、それが大人として当然の責務である。

 

6.性犯罪者を許すな

また、「事件は山口達也と被害者の間の問題だから、被害者が許せば復帰してもいいじゃん」という考えも間違っている。山口達也をどう扱うかは、性犯罪者をどう扱うかとイコールだ。未成年に手を出した山口達也が2年も経たずに許されてしまう世界が私は恐ろしい。そんな世界では、私の8年前の被害は、今の苦しみは一笑に付されてしまうに違いない。被害者の感情を抜きにしても、性犯罪者に対して甘すぎるのは、性犯罪を矮小化し、更なる被害を生むことにつながる
また、性犯罪者の再犯率が高いことも念頭に置くべきだ。先日「酒が人をアカンようにするのではなく、その人がもともとアカン人だということを酒が暴く」ことが科学的に証明されたそうだが、それに則れば山口達也は日頃から女子高生とのセックスを望むアカン人だったのだろう。アルコール依存症が治っても、再犯の恐れは大いにある。性犯罪者は元々の倫理観が狂っているからこそ、簡単に許してはいけないのだ。

 

7.山口達也の社会復帰について

「一度失敗した者にはやり直すチャンスすら与えられないのか」論者に向けて言っておくと、私は山口達也の社会復帰自体には反対していない。DASH島の裏方なり、会社員なり好きにすれば良いと思う。被害者の保護者も「この過ちで1人の人間の未来がすべて奪われることは望んでいない」とのコメントを出している。
だが、芸能界復帰だけは許せない。性犯罪者がテレビでのうのうと笑っている姿を見たら被害者が傷つくかもしれないし、山口達也の直接の被害者でなくても、性犯罪に甘い社会に絶望する人はきっと多い。社会復帰をするなら、メディアに露出しないところでやってほしいのだ。

 

8.まとめ

山口達也の復帰を応援するのは、被害女性を傷つけている恐れがあるのでやめるべき。
また、性犯罪者をやすやすと許す風潮は危険であり、山口達也を芸能界に復帰させることは不適切である。

 

9.最後に

復帰賛成派の方は特に、自分と真逆の意見を読んで疲れたかと思います。反対派の方も、自分の経験と重ねて読むのが辛い部分があったかもしれません。皆さんがここまで読んでくださったことを感謝すると共に、山口達也の復帰を手放しで応援することの罪深さを自覚していただけたら幸いです。
また、この記事をTwitter等で共有していただけたらとても嬉しいです。被害に遭った女性が穏やかに暮らせる社会になることを祈っています。