オタク・ワンダーランド

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ハロウィンとケツとトラックと

 

去年のハロウィン、渋谷で軽トラを横転させた半裸男が逮捕されたのは記憶に新しい。男は現行犯ではなく、いくつもの防犯カメラを辿って山梨の自宅を特定されたそうだ。この捜査は大いに賞賛されていたが、私はどうしようもなくやるせない気持ちになってしまう。警察にとって、私のケツの価値はトラック以下だと分かってしまうからだ。

 

突然ケツという単語が出てしまって訳がわからないと思うので、経緯を説明しよう。2015年、私は下着の中まで手を入れようとする悪質な痴漢に遭い、次の駅で襟首を掴んで引きずり下ろした。男は「もうしないから!悪かったから!」と叫んで逃走しようとし、私は両腕でそれにしがみ付いたが、腕力で敵わず引き剥がされてしまった。床に転がされた後、走っていく男を追いかけた。男は階段を登り、閉まったままの改札機を飛び越え、駅の外へと逃げていった。男の落とした自動車のキーを握りしめて泣いていたところを駅員さんに保護され、警察が来て被害届を出した。警察の方に見せてもらった防犯カメラの映像には、走り高跳びのように改札機を飛び越える男の姿がはっきりと写っていた。車のキーもあることだし、きっと捜査して捕まえてくれるだろうと思った。

1日経ち、2日経ち、警察からの連絡はなかった。そんな中、痴漢されたのと同じ時間の同じ路線で、私はその男によく似た男を見かけた。担当の警官に電話をかけて、犯人は毎日この時間にこの路線を利用しているかもしれないと伝えたが、危険だから近付かないようにとしか言われなかった。こちらで捜査は進めていますと言う彼女を信じたが、3日経っても、4日経っても、ついぞ警察から電話が来ることはなかった。

犯人は防犯カメラに映っていた。都心の通勤電車だから、恐らくそう遠くからは来ていない。加えて犯人はSuicaをタッチせずに駅を出たので、その後入場できず近隣の駅で処理を受けているはずだ。落としていった車のキーもあった。渋谷から山梨まで防犯カメラを辿るよりも、ずっとずっと簡単に捕まえられただろう。

では、なぜ警察は捜査をしなかったのか?女子高生のケツはどうでもよくて、トラックが大事だったからに他ならない。トラックがと言うより、羽目を外した人間を野放しにして警察のメンツが潰れること・犯罪が軽視されて治安が悪化することを防ぎたかったのだろう。だが、女子高生のケツは、それと同じかそれ以上に大事ではないのか?前記事で書いたように、性犯罪は魂の殺人だ。あの日殺された私は今でも電車で苦しい思いをしているし、あの日捕まらなかった男は今でもきっと痴漢を繰り返している。彼だけでなく、警察がまともに取り合わないことで増長している痴漢は数多くいるだろう。警察には、どうかトラックと同じかそれ以上にケツを大事にしてほしい。

 

ただの愚痴になってしまったので、少し建設的なお願いも書いておこう。

この事件の時、私は電車の中で男の襟首を掴み、ホームで揉み合って大声で口論して、床に突き飛ばされて、階段を駆け上がって追いかけた。この5分ほど、誰1人として助けてくれなかったのだ。誰もがうわぁ……という目をして、大きな男にしがみつく女子高生をスルーして行った。この時、男性でも女性でも構わない、誰か1人でも加勢してくれたら現行犯逮捕ができたかもしれない。

仕事に遅れてしまうのは面倒だろうし、冤罪だったらと躊躇してしまうかもしれない。だが、力で劣る女が全身全霊で男にしがみ付いているとしたら、それは突き飛ばされようと殴られようと、骨が折れようと諦められない事情がある時だ。冤罪の可能性は0と言って差し支えないだろう。だから、そのような場面に立ち合ったら犯人を取り押さえるのに協力してほしい。協力した側にメリットがないと言われそうだが、痴漢が野放しにされていては、明日はあなたやあなたの家族が被害に遭うかもしれない。痴漢の撲滅は必ずあなたのためになる。人助けが恥ずかしいのなら、自分のためという動機でも構わない。どうか、見て見ぬフリはやめてほしい。