オタク・ワンダーランド

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痴漢被害とその顛末

先日痴漢に遭い、捕まえたところ容疑を否認されたが、今まで捕まえた痴漢は揃ってやりましたごめんなさいと言っていたので驚いた。その後どうなったかという話をまとめておくので、(結論から言うと50万円で示談した)痴漢被害に困っている方にぜひ読んでほしい。なお、要点は以下の5つだ。

・痴漢の逃走を防ぐ方法

・痴漢冤罪は制度上ほぼ起きない

・微物検査の嘘・本当

・示談交渉の際、被害者も絶対に弁護士をつけるべき

・痴漢で泣き寝入りしてほしくない理由

 

 

1.被害~逮捕

平日夕方、都内のそこそこ混んでいる電車内で痴漢に遭った。一般に痴漢と言うと「手で他人のプライベートゾーンや胸を触る」行為がイメージされるが、今回の犯人は手を使わず、勃起した股間を私の尻に押し付けてくる「新型痴漢」というやつだった。私が股間を押し付けられた瞬間抱いたのは恐怖ではなく「またか」だった。私にとって(というか、電車で通勤通学する多くの女性にとって)痴漢は震度3の地震くらいありふれたもので、不快だが黙って我慢することがほとんどだ。しかし、逃げても追尾してくる、勃起してビクビクと脈打つチンポに、私は段々と怒りを感じはじめた。おかしいだろうが。性欲だか加害欲だが知らないが、他人の欲を満たすために私の体を勝手に使われるのは、冷静に考えておかしい。モノじゃねえんだぞ馬鹿野郎。キレた私は、駅に着くと同時に接触中の尻とチンポの間に手を差し入れ、股間ををわし掴んだ。誤認逮捕を防ぐために決死の決断をした。

股間から腕に持ち替え、男をホームに引きずり下ろす。人通りは多かったが、ホームで取っ組み合う40代男性と20代女性を誰もが見て見ないフリをした。前エントリに書いたように、取っ組み合いの末力負けして逃げられたことがあったので、私は恥を捨てた。「痴漢です!助けてください!駅員さん呼んでください!」とデカい声で泣き叫ぶ。私はもう弱っちい高校生ではない。どうやったら助かるか散々考えてきたし、他人の力を借りる図々しさも身につけた。断言するが、痴漢の逃走を防ぐには、周囲の力を借りることが一番有効だ。もちろん電車内で声を上げ、目撃した人に同行を頼むのがベストだが、それが難しければホームで叫ぶのでもいい。女は男に力で敵わないのだから、諦めて人に助けてもらおう。私の場合、叫ぶ→親切な人が駅員さんを呼んでくれる→犯人確保→警察官がやって来る→被害届を出す意思を示し、警察署に連れて行かれる という流れになった。

(3/20追記:性器の描写から露出していた?との声をお聞きしましたがしていません。様子がはっきりと分かるほど強く押し付けられていた・フル勃起だっただけです)

2.警察署での手続き

※この項目は警察署に行ったらどうなるの?と不安な方向け。行って調書を取られたことのある方には既知の内容ばかりだと思うので読み飛ばしてください

警察署にて、被害者は供述調書と被害届を作成することになる。書類は私が被害を説明し、刑事がPCに打ち込み、私が文章に間違いがないか確認するという形で進められる。いつどこでどのように被害に遭ったか、被害に遭った時どんな気持ちだったか、被害時の服装・体勢はどのようなものだったか(人形と男性刑事で再現し、写真を撮る)等を確認し、署を出るまでに5時間かかった。ここで強調しておきたいのは

・刑事は被害者の感情に配慮してくれる。でっち上げを疑われたり、被害をエロい目で見たり、こちらにも非があると言ったりしない

・署での行動は割と自由。スマホは手元にあるので、親への連絡はもちろん、手続き上生じた空き時間にツイッターまで見られる。トイレに行けるし、頼めば飲み物ももらえる

・とにかく時間がかかるが、時間に制約がある場合(私の場合は終電)伝えれば善処してくれる

ということだ。特に1点目に関して不安に思っている方が多いと思うが、生活安全課勤務、それも痴漢被害者の聴取にあたる刑事に傷つけられることはまずないので安心してほしい。初めに駅に来た無知な警察官に酷い扱いを受けたと言う話をしばしば聞くが、被害届を出す意思を強調しさっさと警察署へ行こう。

(3/20追記:サンプル数1でそんなこと言っていいの?とのご意見をいただきました。私は被害届を提出したことが3回あり、3回とも刑事さんがまともだったので教育が行き届いているのかなと……そうでなければ申し訳ありません)

3.検察とのやり取り

担当検事との電話・面談で伝えられたことは以下4点。

・犯人は示談を望んでいる

・犯人は一転して容疑を認めたが、故意については否認(興奮して勃起はしたが、わざと押し付けたのではないと主張)

・私が警察で希望した微物検査は実施されなかった

・故意が争点であり、故意を立証できないと起訴できない。起訴できるかは現状五分五分

 

端的に言って腹が立った。身動きが取れないほど混んではおらず、不本意に勃起してしまったならどかせばよかったはずの勃起チンポを二駅にわたって押し付けておいて、故意を否認していること。そのせいで不起訴になる可能性があること(検察は有罪にできる可能性が高い事件しか起訴しない)。故意を否定しながら示談を申し入れてくること。もう全てに腹が立った。

そもそも「故意を立証できないと起訴できない」というのは当然の話である。日本の司法は「推定無罪の原則」で被告人の人権を保護しており、有罪とするには検察が有罪を証明しなければならないからだ。満員電車でたまたまお尻に手が触れただけで痴漢!有罪!となってしまっては困るから、この制度は必要だ。しかし、私の件ではどうだろう?先述したようにチンポは二駅にわたる長時間押し付けられているし、私が体をずらして逃げた後犯人もついてきて再度押し付けられた。この状況においても故意が立証できない確率が50%はあるのだという。日本の司法、痴漢加害者に甘すぎでは??この有様ではスカートの上からお尻を触った痴漢なんて故意を否認するだけでサクッと起訴を免れられる。つまり、起訴されるのは容疑を自主的に認めた痴漢と、故意が証明できる(手に被害者のパンツの繊維がついていたとか)痴漢だけといって差し支えないはずだ。この制度では冤罪などほぼ起きない。冤罪がー冤罪がーと必要以上に大騒ぎして痴漢被害者の口を塞ぐ人にぜひ知ってほしい事実である。

また、微物検査については、当初犯人が押し付けたこと自体を否定していたため私が要求したのに実施されなかった。担当検事曰く、微物検査は接触があったか否かのみを判定するものであり、今回の件では犯人が押し付けたことを認めたため実施しなかったのだと言う。しかし、後に弁護士に尋ねたところ、微物検査によってどの程度の強さで接触したか分かる場合もあるとのことで、微物検査を行ってくれていれば故意の証明ができたかもしれないと恨めしく思っている。検事と弁護士で意見が割れたが、いずれにせよ北村弁護士の「ふれたのか触ったのか揉んだのかがわかる」という例の画像は嘘と判断して良さそうだ。何なんですかね北村弁護士。担当検事にも例の画像が世に出回っていることを伝えたので、何らかの対策が取られることを祈る。

(3/20追記:冤罪について 誤解されている方が多いようですが、冤罪=無罪なのに有罪となることで、≠この人痴漢です!と言われ被疑者になること。また、警察で嘘の自白を強要され有罪となることを心配している方を散見しますが、そこで折れなければ推定無罪の原則で無罪を勝ち取れるはずです。捜査体制に問題があるのは事実で、自分で自分の身を守っていただくしかないのが現状。被害者側も誤認逮捕を防ぐ努力は尽くしていますが申し訳ない)

4.示談交渉

当初、私は示談を受け入れるつもりはなかった。結果的にお金で体を売ったことと同じになる気がして嫌だったからだ。しかし、犯人が不起訴になる可能性があると聞いて考えを改めた。今後犯人が受けうるダメージは以下の3パターンである。

①示談→示談金〇万+前歴

②起訴→有罪→罰金刑30万くらい+前科

③不起訴→お咎めなし+前歴(3/20追記:不起訴になっても前歴はつくそうです)

④示談+起訴→示談金〇万+罰金刑30万くらい+前科(3/20追記:レアですが実在するそうです。示談には「犯人を許し、被害届を取り下げる」という条件を盛り込むのが普通で、それナシの示談に成功しても金を払った=反省してる=不起訴と判断されることがほとんど)

ここで前歴・前科について説明をしておくと、いずれもこの人は以前こういうことがありましたよ、という記録が警察に残ることだ。効力としては、今後犯人が再犯をしてまたも故意を否認した場合たまたまが2度続くなんてあり得ないよねと故意の証明を支えたり、再犯だから罰金刑では済まないよねと懲役刑がついたりする。

私が一番避けたいのは犯人の負うダメージがほぼ0になる③だった。なるべく犯人を懲らしめて再犯を防ぐという観点から、③になるくらいなら①でがっつり示談金を取った方が良い。ということで、今まで拒絶していた示談交渉に入ることにした。

交渉にあたり、私は弁護士についてもらった。この記事(痴漢で「示談慣れ」した常習者と被害者に"情報格差" 手薄な法的サポート(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース

)が詳しいが、犯人側の弁護士は被害者をなめる傾向があり、なめられないためにはこちらも弁護士をつけることが必須だ。また、弁護士に交渉を任せることで、心理的な負担が軽くなるのも良い点だ。私は交渉を先生に丸投げし、示談金20万を提示されたがどうか?→NO→より多額の示談金を要求するため被害の実情を伝えると効果的だが、被害後生活に支障はあったか?→男性不信とうつが酷く通院中etc…→それを元に作成してもらった陳述書を犯人に提示→示談金50万(決して高い部類ではない。犯人が20万をなかなか譲らなかったのでこちらが譲歩した)で示談成立、という流れになった。日弁連の援助制度を利用したため、示談金の10数%を支払うだけでこれだけ戦うことができた。私1人では当初の20万円で諦めたかもしれないので、弁護士についてもらったことは非常に良かったと思う。

 

5.私が泣き寝入りしなかった理由

私は中学生の時から痴漢に遭い続け、男性不信をこじらせた末日常生活がままならずうつ状態になった。こんな目に遭う女の子を一人でも減らすには、どうしたらいいか?それは痴漢の撲滅ーー即ち、痴漢の新規参入を防ぐこと・既に痴漢をしている人の再犯を防止することである。前者は性教育やメディアに任せる他ないが、後者は私にもできる。痴漢は常習性が高い犯罪なので、1人の痴漢が数万人の被害者を生むこともある。(参考:30年痴漢をし続けた加害者が打ち明けた心情 | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)私が1人の痴漢を捕まえて懲らしめ、再犯を防ぐだけで数万人の女の子が救えるのだ。だから、私は泣き寝入りはもうしないと決意した。

痴漢を捕まえるのはとにかく大変だが、どうかあなたも泣き寝入りしないでほしい。数時間の犠牲で明日の自分や友達、将来の子供など、大切な人を救えるなら安いものだ。

 

6.余談 警察・検察に望むこと

・微物検査の徹底。科捜研が混雑していて極力微物検査をしたくないようだが、検査によって故意の証明ができるかもしれないようなケースでは絶対にやってほしい。

・故意証明の緩和。今回のようなケースでも故意を証明できるか五分五分というのは明らかに不当。

・3/20追記:車内カメラの完備。人と人が完全に密着している場合カメラは無力だが、今回のように混雑率はそこそこなのに不自然に密着してきた場合では証明力があるのではないか。

・痴漢常習者を治療につなげること。痴漢常習者の多くは依存症であり、治療をしなければ何度捕まろうとも再犯を繰り返す。それにも関わらず、日本には一部の刑務所で希望した者のみに治療を受けさせる制度しかない。刑務所に入るまで、治療を希望するほど病気を自覚するまで何人が犠牲になるのか。強制的に治療を受けさせるのは加害者の人権を侵害するから……と法学者が言っていたが、被害者の人権も大切にしてほしい。もっと早期に治療につなげる制度を確立するべきだ。