オタク・ワンダーランド

好きなものの話とか考えたこととか

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執着と愛玩

2週間前、10年弱好きだった女から「言うのをすっかり忘れてたんだけど、半年前に彼氏ができたんだよね」と報告された。

ショックのあまり電車内でボロボロ泣いたり飯が食えなくなったりしていたが、そろそろケリをつけて原稿をやらないとマジでイベントに間に合わないので、現時点までに考えたことを吐き出してスッキリしておこうと思う。

予防線を張るようでダサいが、ここに書く内容は私という人間の最悪さ・キモさを煮詰めた気色悪いものになってしまうので、耐えられなかったら途中で読むのをやめてほしい。

 

どこから話そうか。

まず、私は皆さんご存知の通り絵を描くオタクである。幼少期から絵を描いていて、小学校では「茶谷ちゃんは将来きっと漫画家だね」と持て囃されて、自分より絵の上手いガキを見たことがなかった。

中学受験をして、第一志望の女子中高一貫校に入学した春、同じクラスで私は自分より絵の上手いガキに出会った。体だけで言えば私の方が形は取れていたが、手とか表情とか、そういう表現力に「勝てない」と思った。それが例の女であった(ここでは仮にAとする)。

Aと私はお互いオタクだったので自然に仲良くなった。当時AはBLEACH綾瀬川弓親にお熱だった。Aの描いた"弓親様"の絵に対して、私はしょっちゅう「デッサンがなっていない」とか散々なダメ出しをしたらしい。らしいというのは自分では覚えていないからだ。私が大人になって幼稚なマウントで自尊心を満たさなくなってから、たびたびAが当時の恨み言を言うのでそういうことがあったと認識している。もう出会いの時点から最悪。

出会いがこんなだったにも関わらず、高2になっても私とAは同じ部活で仲良くしていた。文化祭の準備か何かで2人で部室にいた時、Aが「クラスメイトのXに告白された」と打ち明けてきた。先ほど言及したが、女子校である。AもXも女である。女子校では、こういうことはよくあるのだ。

それを聞いた私は怒りで握っていた鉛筆を折った(猫猫みたいなキレ方しないでくれ)。その日まではAに対して恋愛感情なんかなかったくせに、Xという横やりが現れたと聞いた瞬間「は?なんで?私が欲しいんだが?」と変なスイッチが入ってしまった。それで私と付き合えよ!!とゴネて何とかYESと言わせたものの、1カ月かそこらで「私はやっぱりレズビアンじゃないかも」と振られた。とはいえそれはたぶん建前で、後に共通の友人から「当時のAは茶谷の暴走に怯えていた」と聞いて本当に反省した。

振られてからも普通に仲はよかった。高校を卒業してからも、Aが遠方の医学部に進学したため年数回ではあるが会っていたし、深夜に延々と通話に興じることもあった。卒業からの7年間、私は彼女を作ったりなんだりしていたが、Aにはそういうことが一切なく、かつそれがコンプレックスでもあるようだった。(これについては、後で詳述する)

当時うつ病を患っていた私は、Aが私を優先してくれないと途端に不安定になった。Aが「これから同期と遊びに行くからあとで返信するね」と言い残して、翌朝になってもLINEを寄こさなかったのでビービー泣いたことがある。あとでと言うからには夜には返信が来るだろうと思ったのに、私のことなんてどうでもいいんだ、医学部の同期の方が大事なんだ、というメンヘラ論法である。そのまんま「Aにはいずれ医者コミュニティが大事になって、私のことなんかどうでもよくなる。本質的には既に友達でない」とヒスり散らかした。めちゃくちゃ怒られた。曰くAは友達に優先順位をつけるようなことはしておらず、同期のことも茶谷のことも同様に大切である、だからそういうことを言うなと。それでその場は丸く収まったが、このメンヘラ論法は今回再び炸裂した。

Aは無事今年の春に医学部を卒業する。春からどこに住むのか、といった話を振ったら、Aが急に平謝りをし始めた。そこで冒頭の報告が来るわけである。「半年前に彼氏ができたが、国家試験の準備で忙しくて会っていなかったのですっかり忘れていた。春からはその人の家に住まわせてもらう」とのことだった。

在宅勤務中にそれを聞いた私はもう目の前真っ白である。は?半年前?まあ本当に抜けてるヤツだから半年忘れてたのはガチで悪意ないのかも。にしてもいきなり同棲かよ。Aの家はものすごく過保護だ。雨だから早く帰って来なさいなどと意味不明なことを言う程度には過保護だ。高校の授業が終わった後、予備校のない日いっしょに新宿で遊んでいて、お母様からそういう連絡が入ると名残惜しい気持ちでまた明日ねと別れていた。それは今どうでもいいけど、そんな親御さんだから、結婚前提でなければ同棲など許すはずがない。つまりそういうことである。とりあえずLINEを放置して、さめざめと泣きながら定時まで仕事をした。

 

というのが、一連の流れ。

数日後、私はAに理由を説明の上LINEをブロックした。全然納得はしてもらえなかったが、なんの説明もなく消息を絶つのは13年来の友人に対してさすがに不誠実だと思ったので一応説明はした。

Aにした説明は以下の通りである。(トーク履歴を消してしまったので原文とはややニュアンスが違うかも)。

・私はAのことがずっと欲しかった。私はAのことを一番大切にしていたので、Aにも一番に大切にされたかった。

・それが叶わないことを知って、積年の執着が晴れたのか今は特に怒っていない。が、今後自分以外の隣で幸せそうにしているAを見て冷静でいられる自信はない。「もう友達じゃない」事件同様にヒスって迷惑をかけてしまうと思う。

・なので私は今後Aの人生に関わらない。今までたくさん迷惑をかけてごめん。お互い、お互いの知らないところで幸せになろう。

ここから1週間超モヤモヤと考え続けて自分の感情を言語化していたら、どうやらこの説明はちょっと違ったな、ということが分かってきた。「私はAのことがずっと欲しかった」の部分が違う。正確には「私はよそで彼女作ってハッピーになるけど、Aにはずっと独身のまま、誰のものにもならず、家族を除いて私を一番好きでいてほしかった」である。最悪最悪最悪最悪。自分で言ってて最悪すぎてゾッとしちゃった。私は、結局Aの「満たされていなくて自信がない」ところが好きだったんだと思う。

象徴的なエピソードがひとつある。いつだったか、ハンドクリームに対して私が「テクスチャが精液すぎる」と言った時(下品すぎる)、Aは「自慢か」と怒っていて、変だなあと思った。女の身体を持って生まれたら男とセックスするのなんか簡単で、精液のテクスチャを知っていることは女として優れていることの証左になどならない。でもAはそう思っているようだった。そういう、虐待的でない家庭で育ったくせになぜか自己肯定感の低いところが好きだった。「私なんて××なのにな、茶谷はすごいなあ」と自信のないやつを侍らせていると自分が優れた人間であるような錯覚をして気持ちがよかったんだと思う。それは愛玩だ。ペットの犬が階段を登れなくて、抱き上げて2階に連れて行ってとキュンキュン縋ってくるのがかわいい気持ちと同じだ。私はAに対して恋愛感情に限りなく近い執着を抱いてきたと思っていたが、実際にはそもそも対等だとは思っていなかったのだ。

ところが、結婚間近の男ができたのだと言う。私は「正しさ」というものへの執着がものすごくあって、女に生まれたからには男と恋愛して結婚・妊娠・出産をするのが「正しい」人生だと思っている。でも私はレズビアンなので「正しい」人生を手に入れることができなくて、それどころか25にもなってA以外の女を好きになったことがなく、このまま行けば孤独死まっしぐらである。なのにAはいつの間にか私よりよっぽど「正しい」人生を手に入れていた。私が犬扱いしてきたのはとんだお門違いだったというわけだ。なんてしょうもない話だろう。

 

この話に特にオチはない。次は相手のことをちゃんと人間として見てちゃんと愛さなければならない。自分の感情で振り回したり傷つけたりせずちゃんと大切にしなければならない。

言い訳をしておくと、「もう友達じゃない」事件のようなヒスり方を、私は家族とAの他にはしたことがない。自分の内側と認識した人間に対して侵食的・暴力的なコミュニケーションを取るのは完全に親譲りの悪い癖だが、もう立派な大人なので、親を言い訳にせず自分で自分を修正していくしかない。解呪解呪!

A以外の女に執着したことが一度もなくてタイプさえ分からないけれど、出会いの試行回数を増やさないことには愛することも愛されることもできないので、とりあえず出会い系やらイベントやらでいろんな女に会おうと最近は頑張っています。以上、近況報告でした。

 

せっかくなのでここまで読んでくださったみなさんにひとつ教訓を伝授します。

「そういえば半年前に彼氏が」の報告を受けてブチギレしていた私に、Aは「そもそも茶谷って私のこと一番大事だったの!?」と言い放ちました。私は「そこからかよ!!!!!!」と内心ブチギレましたが、それもそのはず、「もう友達じゃない」事件以降、暴走して迷惑をかけないように好意が伝わる言動を意図的に控えていたのです。バカすぎる。

みなさんはラオウにならないでください。好きな人には好きだって伝えて毎日めちゃくちゃ抱きしめましょう。俺の屍を超えてゆけ。